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鋭い雨に打たれ、少年の心の傷はさらに深くなっていく。
しかし、表情は無。それを貫く。
少年が自分の席に座ったのを見計らったかの様にチャイムが鳴った。
チャイムは少年の敵であるナイフと雨を振り払った。
先生が教室に入って来た。
先生は40半ばくらいの、最近お腹が出てきた様な人。
そいつは教室に入って早々に点呼を始めた。
坦々と次々に呼ばれる名前。
突然、少しの間が空いた。
そして、聞こえてくる、ため息と共に
「瀧川 優海(たきがわ ゆうみ)」
少年の名前が呼ばれた。
「はい……」
その返事に力など無い。
あるのは疲れきった弱々しく、悲しみを含んだ声だけだ。
先生の面倒臭そうな態度に呆れ、期待を無くす。
優海は静かにHR(ホームルーム)が終わるのを待った。
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