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「随分めでたい話だな」
「そうつまらない顔しないでくれよ、どっかの誰かが、一生懸命読み手の徳になるよう考えた物語なんだから。
エンターテイメントの本懐は、一時的にでも現実の辛さを忘れてもらって、明日もがんばろう、って受け取り手に思ってもらうこと。
そんな願いを込めてるんだからさ」
「押し付けだ。社会に生きる人のなかには、様々な事情や哲学で独身を貫くなど、それを必要としない人間もいるし、もちろん、それらがなくても強く生きられる人間もいる」
「……そうだね。そういう人は違う物語をみてくれればいいか」
「お前の本業は物売りか? 第一、いらない人間にいらない物勧めてどうする」
「何言ってんだ、君こそ営業マンだろ? いい営業マンの条件は、北極に住む人間に冷蔵庫を売ることだ、ぜ」
「ひと昔前の文句だ。時代は常に変わる。ないところにない物を売る、ビジネスにおいてはな、独占こそ最高の利益を生むのだ。それは絶対だ」
「だったらなおさら、君こそ時代をよくみろ。今の時代こそシェアの時代さ、インターネットの発達によって情報や知恵のシェアが出来るこんな時代なんだから、あってもいいじゃないか」
ドレッドノートは天井のシャンデリアを見つめて
「こんな物語……あるいは、そういう物語が」
と加えた。
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