拷問ババアの章

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「ぶっ、ぼぶ」 というおかしな声が大和の喉から湧き出た、が大和はそれを咥内でぐっと押し留めた。 アイオワはただニコニコと微笑んでいるだけだ。 にも関わらず大和の頬は緊張し、歯と歯は浮いた。 アイオワの顔面は、墨をかぶったカモメのような眉で、前歯はまさに4両編成の白い電車だった。 やたらとキラキラした瞳に、ジャムおじさんのような赤い鼻がひくひくと動いている。 トドメに、オタマジャクシのように毛がちょろりと生えたホクロが、大和を涙目にした。 まさに顔面すべてが〝すべらない〟メイド、アイオワ。 ……これは睨めっこという名の拷問だ。 大和は強くそう思った。 そして大和が負けるのは時間の問題だった。 睨めっこの基本は「声を出したら負け」(地域や空気によってルールが異なります。) 大和は一か八か、賭けに出る。 次の瞬間、「はぁーん」という声を、アイオワは心のなかで叫んだ。 ……大和が、アイオワのいけない太陽を思いっきりつねったのだ。 「……まさに、鬼」 文は硬い唾を飲みこみ、大和の形相を見つめた。
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