VS 君。

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《雨あがれ》 ようやく寒さも和らいで 春を告げる暖かい風 梅の香がほのかに漂い 桜が出番を待ち侘びる なのに こんなにも冷たい雨 肌に染み入る冷たい雨 どこかの誰かの悲しみが 雨をいっそう冷やしてく 大切な人を失って 流す涙の一粒が 雨をますます冷やしてく 傘さす手にも力なく ただただ雨に打たれてる 宿る軒すら見つからず ずっと雨に濡れている それでもどうか忘れないで 傘を差し出す温かな手と 宿る場所があることを やまない雨はないことを 見失わないように 君の手をとる 僕がいるということを でもまだ今はこのままで 雨に濡れていたいと言う とっくに体は凍えているのに 雨に打ちひしがれていたいと言う あぁどうしたことか こんなに風は暖かいのに こんなに春は近いのに こんなにそばにいるというのに… (雨よあがれ!)と 願うことしかできないなんて
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