序─はじまり─

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──*──  ぼんやりと、レイスは部屋の中に佇んでいた。  月が青く照らす部屋の中、腰掛けるベッドがギシギシと悲しげに鳴く。あるいは、自分の心が沈んでいるからそう聞こえてしまうだけかも知れない。と思う。  異動の準備という準備は全く無かった。レイスがこの部屋に私物を持ち込んだのが異動を命じられる前日だったので、当然といえば当然である。そもそも、この前までひたすら訓練に励んでいただけだったので、私物と呼べる物は数着の服だけ。ジェノサイから準備をしろと言われた後からこの二日間、レイスは出来るだけ体を動かすように意識して過ごしてきた。とにかく少しでも体を動かさなければ、後悔ばかり込み上げてきたからだ。  しかし、今日は違うことを考えていた。 「…………マルナ第三王女ミレディ=メル=レイゼンリュール、か」  自分が異動する原因となってしまい、けれど異動で済むように取り計らってくれた、言葉を交わしたことも無い王族。
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