笑顔3

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――目が覚めると、俺は何かフカフカした場所に横になっていた。 ぼぅ……とした頭の中で薄目を開けると、左手側の窓の外から星空が見える。 廻る星空。流星群。吐き気も催す酩酊感に、そういえば今日はコンパに行った事を思い出す。 そして雫ちゃんに出会って、チィちゃんの話を聞いて。彼女を慰めるに託つけて、口説きに掛かったんだったか。 ……おかしいな。そこまで酔ってもいないはずだったのだけれど………つか、この見慣れない風景、もしや彼女の部屋だろうか。 しかし、彼女の姿は見えない。 このフカフカした感触も、良く見ればベットの上みたいだし。それに……、 「……俺、真っ裸じゃないですかぁ?」 おいおいおいおいッ!! 瞬時に状況把握。一瞬で目が冴える。こうなってしまっては、たった一つしか思い浮かばない! 「事後……だと……ッ?」 無論、それは良い。それこそがこちらの第一目標。それ自体は問題ないのだが。 しかし、その事を『何一つ覚えていない』とか!迂闊!涙目!ぐぅの音も出ない! 顔を覆って咽び泣こうと(フリをしようと)して…………、 「……?……ッ!?」 …………とんでも無い違和感に気付いた。 「あ……れ?手が……」 酩酊状態で感覚が麻痺していた時には気付かなかったが、手首辺りに金属的な感触。 ……へえ?何これ?手錠?え?あれれ? ――俺は素っ裸というあられも無い姿で、フカフカのベットの上に両手を縛りつけられていたのだった。 ちょうど万歳をする体勢で、裸大の字なんて、生涯で一番恥ずかしい格好なんだけど!? ……えぇと、つまりどういう事だ?簡単に解釈すりならば、これはいわゆる、エスとエムから構成される、ハードなプレイの一つなのか?つか、あの雫ちゃんとこの俺とで?むしろ……、 「この俺がM受けだとぉぉぉぅッ!?」 「――あ~、目が覚めたんですね先輩」 目覚め一発の、そのあまりにもワンダフルな状況に叫び声をあげると、可愛らしい声がして部屋の戸が開かれる。 その先に、雫ちゃんがいた。 彼女は既に酔いが覚めた様子。手に何かを抱えた姿で、弾む足取りと共にやってくる。 「あ……し、雫ちゃん。俺、寝てたみたいでさぁ」 ようやく現れた部屋の主の姿に、俺はホッ胸を撫で下ろした。良かった。状況の把握も一人ではただの空想にしかならないし。
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