笑顔3

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その旨を、オブラートに包んで、厭らしさを微塵も感じさせないキリリとした顔で尋ねると、背中の雫ちゃんは少し不安気に眉をハの字に歪めて、 「……だってぇ、先輩はずっと一緒にいてくれるんでしょう?」 と呟いた。 …………ッ!!!…………オウ……。オーマイガッ!なーんという事でしょうッ!! 俺はどうやら、とっくに雫ちゃんを攻略していたらしい……。 「いやぁ、まぁ……、そりゃいてあげるけど?」 顔が緩んでしまうのを、抑える事が出来ない。……彼女を背負っていて良かった。向こうからはこのだらしない顔は見えない事だろう。 一応、窓にも映らない様にしないとなッ! 動悸と興奮と、歓喜と欲望と、アドレナリンをフル加速させたままエレベーターに乗り、5階へ。 正方形の密室の中、雫ちゃんの体温がやけに生々しい。 ギュッと、彼女の腕は締まり、おんぶの状態は背後から抱きつかれるそれに進化。更に耳元にそっと、ふやけた声が届く。 「あのぅ……、部屋の中片付いていないので、あんまりじろじろ見ないで下さい…ね?」 見たい!そんな事を言われたら逆に!!むしろ、まじまじとッ!! 片付いてないって言ったって、まさか俺の6畳アパートよりはよほど綺麗だろうさ! そういう、“いかにも”な感じの女の子っぽさも、グッとくる! や、ややや。しかし、だ。あんまり浮かれるなよ俺! 部屋に招かれた時点でもう8割りは勝ったも同然だが、まだ彼女を“その気にさせる”という、重大な使命が残っている。 いくらアルコールでベロベロだとは言え、無理矢理っていうのは主義に反するしなッ! 505号室までたどり着く道、何とか自然に紳士的に間を繋げようと話題の挿入を試みて、「そういえば」と、俺は兼ねてから気になっていた事を彼女に尋ねた。 「そういえば、雫ちゃんの飼っていた“チィちゃん”って、結局、何のペットなの?」 ―――その質問を最後に、首筋にジリリッ!と、ナニかが流れて――――、 意識が暗転した。
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