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はじまり
一週間ぶりの休日。お互いにお昼頃までゆったりと過ごし、17:00になった頃に僧野家に到着し、何食わぬ顔で柳はキッチンに向かった。
や「姫とこうしているのって久し振りだな」姫とは、僧野のあだ名である。
懐かしさに浸るように、キッチンから規則的な包丁の音を聞かせ、向かいのソファーでヘッドホンをしながら、雑誌に目を通す僧野に話し掛ける。
そ「…………。」
僧野は肘掛けを枕にし、反対の肘掛けに足を乗せながらリズムを取っている。
客人が来てもこんな態度でいられるのも、お互いを知り尽くした幼なじみだから
中学校が同じだった時は、友達から付き合っているんだろ!と、よくからかわれたが、今ではいい思い出である
や「そういえば、トマトは食えるようになったか?
まぁ、ミートソースなら問題なかったよな」
そ「……………。」
今度はジュー……と、フライパンを焼くいい音が響かせながら、柳は根気よく話し掛けるが、僧野は自分の世界からなかなか帰って来ない。
でも、コレが二人の常識。いつも気を配り、完璧を演じる僧野麻美が、唯一本当の自分を見せれる時間だと柳は知っている。だから何も文句を言わず、いつヘッドホンを外してもいいように、他愛の無い話しを話し続ける。
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