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「いらっしゃいませ、奥の席へどうぞ」
店内に入ると店員に禁煙席へ案内され、京が長椅子に座ると、瑞樹は向かい側に座らずに京の隣でべったりだった。
「えへへ」
瑞樹はよほど嬉しいみたいだ。
にこにこ笑顔を浮かべて、テーブル下では足をぱたぱた動かしている。
「……」
京も小さい頃、両親と外食した時にすごく楽しかった思い出がある。
瑞樹も今そんな感じなのだろうか。
(……瑞樹はこんな僕を兄として慕ってくれるだろうか…)
本当の自分を知られたらきっと瑞樹も…………
「……京お兄ちゃん?」
瑞樹の声にハッとする。
瑞樹は不安げに京を見つめる。
「…メニューたくさんあるな……瑞樹は何にするか決めたか?」
京はとっさに振る舞って瑞樹にメニュー表を勧める。
「えーと……えーと……う~」
京からメニュー表を受け取った瑞樹はメニュー表を見つめながら悩み始めた。
パラパラとページをめくる、三回ほどめくったところで何かお目当てを見つけたのか瑞樹の表情が明るくなった。
「京お兄ちゃんっ!瑞樹、これが……」
指差そうとして途中で躊躇うように手の動きが止まる。
「あ……でも…」
瑞樹の表情が曇り、呟くように言う。
瑞樹の視線はお子様ランチに向けられていた。
「これがいいのか?」
京はメニューのお子様ランチを指差して瑞樹に尋ねる。
「あ……ううん」
「好きなの頼んでいいんだぞ」
「…ちがうの、瑞樹……おとなにならなきゃだから……だから」
瑞樹は泣きそうになる。
京には瑞樹の気持ちを察した。
瑞樹はまだ幼い、まだ歳が十もいかない子供だ。
両親を失ったことによって、瑞樹は自ら少しずつ大人になろうと振る舞おうとしている。
『……わがまま……言って……ごめんなさい』
わがまま言ってもいい。
瑞樹くらいの歳はそれくらいがちょうどいいんだ。
『断っても良かったんだよ……?』
人に遠慮して生きてくにはまだ早い。
「…………」
京は強く思う。
瑞樹は笑っているほうがいい。
せめて、自分のような救いようのないやつにならないようにと。

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