プロローグ

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『酔っ払いは助手席においで。寝られたら困るから。笑』   『はーい』   そんな他愛ない言葉を交わし、車を発進させた。 横目で見ると、案外酔ってないみたいだ。 確か、酒は強いと聞いたことあるような気がする。         場所が近かったためにすぐに宮川さん家の前に着いた。 車内でこれといって会話はしてない。 期待ハズレか…と思いながらギアをニュートラルにいれ、フットブレーキを踏んだ。   『今日はありがとう、すまんやったね』   私が言うと、宮川さんは今まで見たことない優しい顔になり、私を見つめた。   『こっちこそありがとう』   私の頭を撫でたあとに、フワッと私の頬を両手で包んだ。 そして、軽く、キスをした―――   呆然とする私に、   『おやすみ』   と言い、宮川さんは車を降りた。       『お…おやすみなさい』         動揺せずにはいられなかった。 帰り道、宮川さんとの一瞬のキスを思い浮かべながらフラフラと運転した。   冗談じゃねぇのかよ…   その言葉が頭の中で反復した。     
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