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壁に背を接しながら左腕でドアノブを捻った。ここには鍵は無い。ドアのロックが外れたのを理解し、それからドアを蹴り開けた。
暗闇で二つの煌めきがエベルのほうへと向いた。
「誰だ?」
「この店の者だ。お前こそ何者だ!」
「ちっ、あの細いのだけじゃなかったのかよ。まあいい、俺の名はラルゴだ。冥土の土産にもしろ!」
名乗った途端、ラルゴは奇声を上げてエベルへと突進した。エベルは危険を察し、とっさに横へと飛び退いた。
「んだと!?」
エベルは驚愕した。ラルゴは壁を拳大ほど陥没させ、そこを中心にして蜘蛛の巣状の亀裂を走らせている。
「ふん、避けたか。さっきの奴よりかは楽しめそうだ」
「ちっ……」
再びラルゴの武器が唸りを上げる。一発で内蔵が全て逝ってしまう。エベルは無意識にそれを感じ取っていた。圧倒的な破壊力を持つ打撃が、幾度もエベルを襲う。棍棒が店に当たる度に木の破片が飛び散った。エベルは恐怖が先立ち、鉄棒で反撃することを忘れている。
「おらおらぁぁっ!どうした!弱いなぁ、はははははっっ!!」
「なっ!」
エベルの身体が前触れも無く宙を舞った。偶然にも床に落ちていた布地に足を取られてしまったのだ。
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