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※妹人視点
松「―――というように、松尾芭蕉とはとても偉大な人物で、弟子の曽良はいつも彼を敬い讃え跪いて―――」
『豆豆お豆、僕らのま~め、まーめーおーかー高校~』
松「あ、チャイム鳴っちゃったね。それじゃ、今日の授業はここまで!みんな今日も一日お疲れさま~」
「きりーつ、れぇ、ちゃくせーき」
妹「…ふぅ」
最後の授業が終わり、僕は伸びをしてから帰り支度を始めた。
(古典の授業、今日も松尾芭蕉の話ばっかだったな…。こんな調子でテスト範囲ちゃんと終わんのかな?松尾先生の授業はわかりやすいんだけど、すぐ脱線する上に進むの遅いんだよなぁ)
もうすぐ始まる中間テストのことを心配しながらも、帰り支度を終えた僕は下駄箱へ向かった。
箱の中から靴を取り出した時、ふと彼の顔が浮かんだ。
(そういや、今日は一度も顔を見てないな…)
毎日、昼休みの度に僕のもとを訪れる校則違反のジャージを着た彼の姿を思い浮かべ、僕は小さく首を振った。
(…今日は、会わなくてよかったんだ)
鬼男くんに自分の気持ちを暴露したあと彼に会ってしまったら、まずいことを口走ってしまいそうだった。
だから鬼男くんと別れたあの後も、教室には戻らず保健室に行った。
幸い保険医の竹中先生は僕を追い出すようなことはせず、何も聞かずにただ黙って笑っていてくれた。
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