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今の自分の気持ちをどう言葉にしていいかわからなかった僕は、とりあえず黙ることにした。
芭蕉さんが騒ぎ出したら、また断罪すればいい。
芭「………」
僕の予想とは違い、芭蕉さんは何も答えない僕にそれ以上の追求をしてこなかった。
(これもこれで、なんだか気まずいな…
あ、そうだ)
曽「芭蕉さん、せっかくですからこの景色について一句詠んでみたらどうですか」
僕の提案にしばし考える素振りを見せた後、芭蕉さんは笑顔で答えた。
芭「そうだね!せっかくだし。
そうだなあ……
よし、できた!
曽良くんさ 今日はなんだか 優しいね 芭蕉」
曽良「………。
この景色についてって言いましたよね?」
(まったく、このボケジジィが…)
芭「……だって、この景色より曽良くんが気になっちゃったんだもん」
一瞬、芭蕉さんが何を言っているのかわからなかった。
さっきまではしゃぎまわって、挙げ句の果てに転んでおいて。
僕の方が気になる、なんて。
なんてたちの悪い冗談だ。
……でももしそれが本当なら、今あなたには…
あなたの、世界には…
(僕しか、映っていないと言うのですか?)
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