菜の花畑にて

6/10
前へ
/85ページ
次へ
芭「曽良くん?どうしたの、いきなり黙っ…いたたたたた痛い痛い!!」 曽「こっちを見るな」 今、振り向かれたら困る。 芭蕉さんにこんな顔を見られたら、どうせ馬鹿にしてくるだろうから。 曽「あんたは蝶々でも眺めてなさい」 芭「え、蝶々ならさっき嫌というほど追いかけ回し…」 曽「いいから」 芭「痛い!髪掴まんといて!」 なんだよ、私が何したんだよ、と文句を言っていたが今は構わないでおくことにした。 後で断罪すればいい。 それより今は、この体温をどうにかしなければ。 芭「…曽良くん、少し熱いね。 具合悪いの?」 芭蕉さんが前を向いたまま尋ねてきた。 表情を見なくとも、僕を心配しているのが声音でわかった。 (まったくこの人は、いつも鈍感なくせにこういう時だけ鋭い) 曽「べつに具合が悪いわけではないので安心して下さい」 芭「嘘だ!!」 曽「っ!」 少し油断していた隙に、まんまと振り向かれてしまった。 すぐに顔を背けたが、それも無駄なこと。 今僕は、耳まで真っ赤になっているのだから。 (……あぁ、やってしまった。 芭蕉さんのことだ、このネタで僕を1週間はからかってくるに違いない) そう覚悟をして芭蕉さんと目を合わせると、彼はとても意外な顔をしていた。
/85ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加