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怒りながら心配している、と言ったらいいだろうか。
芭蕉さんはなんとも微妙な顔をしていた。
芭「今日はやけに断罪が少ないと思ったら、やっぱり体調よくないんじゃないか!顔をそんな真っ赤にして…」
芭蕉さんの手が、僕の頬に触れる。
芭蕉さんのくせに生意気だ。
そう思うのに、体が動かない。
いつものように、素っ気ない態度をとればいい。
いつものように、辛辣な言葉を浴びせればいい。
なのに…
(…なんで)
芭「わっ!曽良くん!?」
(なんで僕は、この人を抱き締めているんだ?)
曽「芭蕉さん、今日僕が変なのはあなたのせいなんですよ?」
(何を、言ってるんだ?)
曽「体温が高いのも、断罪が出来ないのも」
(何を言おうとしているんだ、僕は)
曽「……心臓が、こんなにもうるさいのも」
(駄目、だ。それ以上言うな。
……この人を困らせるな)
曽「僕はね、芭蕉さん…」
もう、体が言うことを聞いてくれない。
気持ちが、言葉となって溢れてくる。
今まで気づかないフリをしてきた、自分の本当の気持ちが。
曽「あなたの、ことが……」
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