27人が本棚に入れています
本棚に追加
芭「好きだよ」
その言葉は、的確に僕の気持ちを表していた。
でもそれは僕の口から出た言葉ではなくて。
耳元で、今確かに響いた言葉だった。
芭「好き。君が、好き」
何度も囁かれる言葉に、僕は何も答えることが出来ない。
芭「…ごめんね、辛い思いをさせてしまって。
ごめんね、苦しそうな声を出させてしまって。
知ってたよ。君が私に向けてくれる感情も熱も、全部」
やけに冷静になって話を聞いている自分に驚きつつ、僕は黙って芭蕉さんの紡ぐ言葉を聞いた。
芭「君が……弟子としての気持ちと、もう1つの気持ちとの間で悩んでいたことを、私は知ってた。
でも私はどうしたらいいかわからなくて…逃げていたんだ。
君のことを一番に考えるのなら、今まで通りただの師匠と弟子という関係でいた方がいいんだ。
君の人生を、私みたいなおじさんのために棒に振ってはいけないから」
最初のコメントを投稿しよう!