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芭「だけど、出来なかったんだ。
君が私に向けてくれるもう1つの気持ちは…私にとって、とても嬉しいものだったから。
師匠、失格だね」
芭蕉さんの本当の気持ちを、初めて聞いた気がする。
悩んでいたのは、僕だけではなかった。
辛かったのは、僕だけではなかった。
芭「ごめん、ごめんね。
…好きだよ」
辛そうに言葉を紡ぐこの人がどうしようもなく愛しくて、僕は抱き締める腕をきつくした。
(どうか、謝らないで下さい)
曽「……愛しています、
芭蕉さん」
(僕にとってあなたと一生を共に出来ることは、夢のようなことなのですから)
言葉にしたくても、口から出たのはその一言だけで。
さっきまでは言うつもりのないことまで言ってしまっていたのに、いつの間にか口下手ないつもの自分に戻ってしまっていた。
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