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ねぇ、怒ると風船みたいになるね、とまた意地悪を囁くくせに、きっと本心ではちっともそうは思ってないんだろうな。 何でもない日常と一緒で、僕を見つめる、ジョシュアのまなざしは、かわらず緩やかであたたかだから。 おい、ジョシュア!、背中から遠く、studioに響きわたるくらい大きな声がした。 振り返ったらそこにはマネージャーがいて、手招きされたジョシュアはそちらに走っていった。 走り際、イザヤにゆっくりしていって、と笑いかけて。 遠ざかったジョシュアの背中を見つめて、イザヤは呟く。 「なんだか彼は王子様みたいだよね」 まるで現実的じゃないことを、夢を見ているかの調子で。 「……そう、かな」 決して否定する意味で答えたんじゃない。 その言葉の理由をいろいろ考えた。 画面越しのジョシュアは確かにとても非現実的な生き物だと思う。 僕にしてるいたずらで意地悪なジョシュアはそこに映らない、ただただ、やわらかく愛くるしい、清らかな彼がそこに存在している。  
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