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起きたのか? と思いながら、一歩後ずさりをして様子を見ることにする。
ところが、また先ほどと同じように規則正しい息遣いが聞こえてきて、さっきのは寝言だったということに気づく。
「どんな夢見てるんだか…」
俺はほっと胸を撫で下ろしながら、ハルヒの寝顔を覗き込んだ。
「仕方ないな。今日はミーティング無しってことでいいよな?」
だって、こんなに気持ちよさそうに寝ている人間を起こすことほど、申し訳ないことなんてないだろう?
このまま…せめて下校時間までは、こうして寝かせておくのも悪くない。
今日はもう解散して大丈夫だろう。
そう思ってハルヒに自分の上着をかけてやり、教室を後にしようと思って扉に目を向けた時だった。
「WAWAWAWA~忘れ物~~ってキョン?何してるんだ?」
「谷口!?」
そう。ヤツはまたタイミング悪くここへやってきてしまったのだ。あの妄想の得意な谷口である。
一度目は、確か朝倉に殺されそうになったあの日。
そして今回が二回目。
「そうか。こないだはランクAマイナーの長門さんに手を出してたのに、今日は涼宮に…お前もとうとうイカれてきたか…」
「いや、待て、誤解だ。何もしてない。何もしてないぞ!はやとちりだけはやめてくれ!な?」
「まあ、お前にも事情があるんだよな。そうだよな。俺は何も見てないことにしてやるよ。俺も男だもんな。うん。」
もう駄目だ。何を言ってもこいつは話を聞いてくれない。
谷口はきっと、都合よく脳内で恋愛物語を妄想しているんだろう。いい迷惑だ。
「だーかーら! 何にもねーっつーの!」
「うーん」
大声で叫んでいると物音が聞こえ、ハルヒの方を見てみると、身体をゆっくりと起こしているのが目に映った。
「じゃ! 俺は帰るわ!」
谷口もハルヒが起きたのが見えたようで、結局谷口は誤解したまま走り去ってしまっていた。
くそっ、またヤツの中で俺という存在がおかしなものへと変化していく。
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