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見返すことができるのなら風見も見返したいとは思っていた。
いつまでも、背景のままのわけにはいかない。誰かの役に立てる主人公(ヒーロー)になりたい、と。
だが、その方法が彼には明確ではなかった。ただ、強大な力を手に入れ、それを振るえばいいのか。政府の人間になり国を導いていけばいいのか。どうしても難しく風見は考えてしまう。
赤城にはどんな考えがあるのか。
風見には気になって仕方がなかった。
しかし、今の赤城に風見はそのようなことを尋ねる勇気などなかった。
赤城の眼差しは真剣そのもので彼は彼であり彼ではなかったから。
「おー、怖い。アニメとかだったら完全に伏線だな」
こうして風見はいつも主題から逃げる。冗談混じりの言葉を並べて軽く流すのだ。
「悪のサイドに落ちちゃうフラグ?冗談きついなー」
赤城は笑いながら風見の言葉に反応する。その姿を見て風見は安堵の息を漏らし炭酸飲料をすべて飲み干した。潤った喉も外に出れば降り注ぐ日差しになんの意味も成さないまま渇いていくことだろう。
だから、風見は潤っている時間を大切にしようとする。
人にとって潤った時間こそがプラスの感情を与える時間なのだから。
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