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毎朝、例の十字路を通って学校へ向かう。
前述した通り友達を持たない僕にとって、学校はただ退屈な場所だった。
登校し、授業を受け、下校する。
その日もテンプレート化されたように行動し、僕は帰路についていた。
4年前と同じように赤や黄色に彩られた木々が、山を覆っている。
そんな風景には目もくれず、僕はただただ道を歩いた。
何も受け付けたくない。
そんな風に。
僕の心は、ここにはない。
あの十字路に、
あの瞬間に閉じ込められているのだ。
そんな無我の状態であの十字路に差し掛かる。
やはりフラッシュバックしてくるあの光景に、今回は少し違和感を覚える。
「あれは……?」
余計なものが加わっていたのだ。
僕達家族を轢き去ったあの黒塗りの車ではなく、赤い乗用車が。
そして通りを挟んだ反対側にいるのは、大きなリュックサックを背負った少女。
その女の子は乗用車が近づいてくるのに気づいていないのか、突然僕の方に走り出した。
「あの、お尋ねしたいことがっ……」
「危ないっ!」
そうは叫んだものの、僕の移動手段は車イス。
あの時の父さんの様に、突き飛ばすこともできない。
「……逃げろっ!」
「え……?」
僕の切羽詰まった声に少女はようやく辺りを見渡し、状況を確認する。
だが、遅すぎた。
やめろ。
キキィィィイイッ!
やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ!
「う゛っ……」
「やめろぉぉぉおおっ!」
撥ね飛ばされた少女を見つめながらも、僕にはただ叫ぶことしかできなかった。
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