23人が本棚に入れています
本棚に追加
少女の体が宙を舞う。
「くそっ……!」
時間が止まったように思えた。
少女の驚いたように見開かれた目が、僕の方を向いた時。
僕は、心臓を鷲掴みされた。
デジャヴ。
いや、そんなことじゃない。
既視感ではない、強烈な違和感。
何かが……何かが違う。
何だ?
確かに、今目の前で起こったのはフラッシュバックではない、本物の現実だ。
だが、その相違からくる違和感じゃない。
何だ?
何故、僕はあの少女に心を奪われるんだ?
恋愛感情ではない、はず。
確かに少女の顔は美しいし、身なりだってこんな田舎に似合わない、大都会のお嬢様って感じ。
高級感溢れる服にリュックサック、という不揃いな格好。
これが、違和感か?
いや、違う。
そんな小さなことじゃない。
もっと。
もっと……
大きなこと。
今までの人生が一気にひっくり返されるような。
そんな違和感。
これはいったい……
ドサッッ!
僕の思考は、少女が田んぼの稲穂の中に落ちる音に遮られた。
最初のコメントを投稿しよう!