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降りてきた救急隊員と、僕は極めて事務的に会話する。
状況を話し終え、少女が担架で救急車に乗せられたのを確認した後、僕は静かにその場から去ろうとした。
だが……
「あ、ちょっと君っ!」
救急隊員が僕の肩を掴む。
「衝突時の詳しい状況などを聞きたいから、一緒に乗ってくれないか? 車イスでも十分乗れる広さはあるから」
疑問形ではあったが、有無を言わせぬ言葉。
僕は、ヘルメットの影から見つめてくる視線に、思わず頷いてしまった。
「よし、それじゃあ」
そう言うと、救急隊員はもう一人の隊員を呼んで僕の両側につき、一気に車内へと持ち上げた。
意外に力持ちなんだ。
「あ、ありがとうございます……」
一応礼を言うと、僕はホイールを回して少女が横たわる担架の側まで移動する。
少女は、白いワンピースに白いカーディガンを羽織っていた。
泥で汚れてはいたが、汚れていない所は眩しいくらいに光っているように錯覚するほど綺麗だ。
また、その側には少し前に流行ったキャラクターが背面にピンクと青で大きくプリントされた少女の華奢な体にしては大きめなリュックサック。
僕は、大きな違和感に首を傾げる。
どうも、田舎に不釣り合いな格好。
大きなリュックサック。
そして、僕に言いかけた言葉……
『あの、お尋ねしたいことがっ……』
確かに少女はそう言った。
どう考えても、地元の人間ではない。
この近くでは、同年代の子供達は皆知り合いのようなものだ。
だから、友達のいない僕がいわゆる変人扱いされてしまうのである。
遠くから来たのであれば、何の理由で?
親戚の家に遊びに来ていたのか?
いや、それだと質問の意味がわからないし……。
搬送先の病院と連絡をとっているのか、なかなか発車しない車内で、僕は悶々と考えていた。
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