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ようやく救急車が動き出し、閉められたカーテンの隙間から見える風景が後ろへどんどん流れていく。
「ついてきてもらってすまないね。警察も病院で待機しているから、いろいろ聞かれるとは思うけど……」
「大丈夫です」
そんなことよりも、僕は家で待っているであろう恵美叔母さんが心配だった。
あの事故のあと、僕が自殺するかもしれないとでも思っているのかは知らないが、
「いつも拓海が視界が入ってないと怖い」
と言っていた。
学校に行くときにあの十字路を通ることも、始めは猛反対された。
でも、反抗して通り続けていくうちに、恵美叔母さんの方が折れてくれた。
今考えれば、とんでもなく迷惑で無礼な話だが、当時の恵美叔母さんも僕に気を遣ってくれたのだろう。
自分の心配で人を縛っても、その人は幸せになれない。
恵美叔母さんが教えてくれたことだ。
それから僕と恵美叔母さんの仲は良好で、滅多に争うこともない。
だからこそ、恵美叔母さんが心配だった。
その旨を伝えると、救急隊員は微笑みながら連絡をとることを許可してくれた。
ただし通話による電波は機器の仕事の障害となるため、病院に着いてからなら、とのこと。
もちろん、少女を救ってくれている機器を壊す気はさらさらないので、携帯の電源を切る。
「ふぅ……」
だいぶ、心が落ち着いた。
少女がすぐ近くにいるからか。
それとも、他人と話すことができたからか。
それは分からないが、いつの間にか僕の心は平常通り落ち着いていた。
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