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車を最寄りの駐車場(とはいっても1キロほど離れているが)に停め、僕らは恵美叔母さんの元へ向かっていた。
何しろ田舎なので、周りには畑くらいしかない。
道も、今僕らが歩いている幹線道路を除けば、ほとんどが土肌を見せている。
一番の印象は、『清々しい』だった。
透き通るような秋晴れの青い空を山々の紅葉が彩り、都会では見られないような大きな鳥が視界を横切ったりして。
都会に息苦しさを感じる……というわけでもないが、何となくそう思ってしまうんだ。
「今日は、どうしようか」
父さんが先頭を歩きながら、話を切り出す。
「そうねぇ……まぁ恵美のところでお昼食べて、そこで考えない?」
「それでも良いけど……そうだ、拓海、久しぶりに釣り行くか?」
父さんが僕に話題を振る。
「え、何?」
「釣りだよ、釣り! 今なら、多分ニジマスくらいならいるだろ」
父さんはあたかも釣竿を握っているかのように、右手を動かす。
そう、父さんは釣りが大好きだ。
昔は父さんが釣ってきた魚が夕飯に出るなんてこともあったけど、最近は昇進して管理職になり忙しいからか、父さんが釣りに行くのを見るのは少なかった気がする。
「どうする? 拓海」
「あぁうん、行くよ」
僕と父さんが釣りに行くのは、別に珍しいことではない。
むしろ毎年行っているのだから、恒例のイベントだ。
「焦らないの。まずは昼ごはんよ」
母さんが笑いながら言う。
恵美叔母さんの家は、目の前にある十字路を曲がった先にある。
そう。
十字路の先に――
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