逃避回想

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僕は、あの事故から4年間、唯一の親族である恵美叔母さんの家にお世話になっている。 右足を失ってしまったから、もちろん車椅子に頼らざるをえなくなった。 昔のように、走り回ることもできない。 特に、これといって好きなスポーツもなかったけれど、一切できなくなるのはやはり悲しい。 日常生活すらままならず、恵美叔母さんの援助が無いとほとんど何もできない。 自分の無力さは分かった。 もう、これ以上ないってくらいに。 ちなみに、まだ犯人は見つかっていない。 というか、事故から半年も経たずに捜査が打ち切られたそうだ。 警察も当てにならない。 できることなら、僕がこの手で犯人を殺してやりたい。 でもそんなことは不可能にきまってるし、何しろ恵美叔母さんに迷惑をかけることになる。 そんな諦めと気遣いによって、僕の自制心は保たれていたのだ。 「いってらっしゃい、気をつけてね」 恵美叔母さんは玄関まで車椅子を押してくれて、年季の入った引き戸を開けてくれる。 途端に、夏にしてはやけに涼しい空気が僕を覆った。 4年いても、まだ慣れないな。 東京に比べ、標高の高いここ水仙市はやはり夏も涼しい。 所謂、避暑地だ。 観光地としても有名だが、僕にはあまり関係のないこと。 僕にとって重要な場所とは…… 家から車椅子で10分弱の距離にある、十字路。 そう、あの時全てを変えた、 あの十字路だ。
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