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通学路上にあるため、必然的にあの十字路を通る。
4年前とほとんど変わらない。
高い塀があり見通しが悪く、ミラーもない曲がり角。
ここで、僕達は……
意識しなくとも、あの光景が鮮明に思い出される。
母さんと父さんを轢き殺し、僕の右足さえも奪ったあの瞬間。
学校に行く時は、必ず見ている。
いや、見なければいけないんだ。
本来なら、被害者である僕がこんなことを思うのはおかしいのかもしれない。
でも、母さんと父さんと繋がれるのはこの時だけだから。
脳裏に蘇る、僕達が轢かれたあのフラッシュバックだけが、僕の慰めなんだ。
怒りが薄れないように。
悲しみを忘れないように。
母さんと父さんを心に、永遠に刻みつける為に。
ほら、またあの時のあの瞬間がフラッシュバック。
でも、僕はそれを拒まない。
悩まされることなんてもちろんなかった。
この十字路を通れば、いつでも2人に会える。
両親を失った悲しみ。
そして、大切な物を奪われた怒り。
それらを、毎朝十字路を通ることで胸に焼き付ける。
朝必ず僕がする、いやしなければならない儀式だ。
車椅子のハンドリムを押しながら、昨日も今日も、そして明日もこの十字路を通っていく。
永久に忘れない為に。
僕は、この十字路を通っていく。
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