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毎朝の儀式を終えると、僕はそのまま学校へと向かう。
この水仙の町には学校が2つしかなくて、しかも僕が通っているのは分校。
小学1年生から中学3年生までの子供達が同じ教室で日々を過ごしている。
全校生徒はたったの20人弱だったが、そんな少人数でアットホームな学校でも僕は友達を作らなかった。
決して、まわりが冷たかったわけじゃない。
むしろ、まわりの子達は進んで僕を助けてくれたり、話しかけたりしてくれた。
「手伝うよ」
「大丈夫?」
「最近、悩んでることない?」
「何かあったら、俺に言えよ」
そんな言葉、聞きたくもない。
僕が相談すれば、救ってくれるのか?
4年の月日さえもが埋められなかったこの大きな穴。
両親を失った喪失感は、失った者にしか分からない。
大切な人が理不尽に殺された僕の気持ち……
誰が分かると言うんだ?
何をしていても身が入らない。
誰が話しかけてきても、その声は僕には届かない。
誰が触れてきても、その感触は僕には届かない。
誰とも関わりたくない。
父さんと母さんが笑っていた、あの過去に戻りたい。
そう思い始めたのは、最近のことだった。
ただ悲しみに明け暮れていた以前に比べれば、少しは進歩したのかもしれないが、僕にとっては何も変わらない。
父さんと母さんに会いたい。
会いたい。
会いたい。
何回祈っただろうか。
神社、寺、二人が眠る墓、星、海、山……
何故僕の声は届かない?
何故僕は……生きている?
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