逃避回想

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別に、生きることに絶望しているわけじゃない。 父さんが自分の命を犠牲にしてまで救ってくれた命を、簡単に捨てるほど僕は薄情じゃないはず。 ただ、生きる意味が分からないんだ。 これも、つい最近感じ始めたこと。 父さんと母さんと3人で暮らしていた頃を思い出し、その過去の映像に幸せを感じる。 じゃあ、今は? 今生きているこの僕には、何の幸せがある? 僕の未来には、どんな希望や期待がある? 結論は、言うまでもない。 何もないんだ。 小学校の頃に、大好きだった先生が言った。 人間は、いつも後ろ向きで進んでいる。 だから、過去を『~前』、未来を『~後』と表記するのだ、と。 まだ小さかった僕にはよく意味が分からなかったが、今なら理解できる。 人生に置いて、未来は自分の後ろに広がっているんだ。 何も見えない、自分の死角。 そこに、未来があるのだと。 あの先生は、『未来には何が起こるか分からない』と僕達に忠告したかったのだろう。 残念ながら、僕はそうは捉えていない。 僕にとって、未来は『無』だ。 今現在生きている意味も、この先ずっと生きていく意味も…… 僕には、ない。 「過去に縛られてる」 一度、恵美叔母さんにそう諭されたことがあった。 もっと自分のこれからに目を向けなさい、と。 そんなこと、できるはずがない。 僕の時間は、あの時からずっと止まっているのだから。
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