妖猫フリン

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老いも死にもしない猫はさすがに不自然なので、数年で飼い主を替えた。 そして、何十年目か、臨月近い若い女に拾われ、新婚夫婦に飼われることとなった。 夫の方は、親から引き継いだ家と土地で、雑貨の中卸しを営んでいた。 常連も親からの遺産で、あまり商才や欲がないようだったが、そこそこ堅実に営んでいた。 覇気もない凡才な男であるが、余計な争いを起こさないことが、身重な妻とぐうたら猫には最高だった。 妻が男の赤ん坊を産んで、2人目を考える頃、男は昔馴染みがした失敗の連帯責任で、資産を失いかねない危機に面した。 ここで去ってしまうのがいつもだが、フリンは知ってしまった。 若い商人が、金になる物を探して親から引き継いだ倉を漁っていたら、先祖とその妻子の肖像画が出てきた。 先祖は、フリンに名付けた富裕な商人だった。 かつての飼い主の血をあの赤ん坊は引くことになるのか。 迷った。迷って、迷って、フリンは人語で飼い主に話しかけた。 平凡な男は酷く慌てたが、フリンの指南に従い危機を脱し、さらに初代の繁栄を取り戻すまでに至った。 フリンは、妻や子供たちに可愛いがられ、影で主人に助言した。
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