妖猫フリン

5/10
前へ
/140ページ
次へ
フリンは船の乗客ではなく、荷物に紛れた野良猫として西の大陸に渡った。 鼠を良く獲り、水夫たちに魚を満腹与えられたペルシャ猫は、国際港に降りたった。 四つ脚で港を、街を巡り、酒場に潜り込んで人の話に耳をそばだてた。 半分は初めて聞く言葉だが、半分は辛うじて解った。 知恵を得た化け猫は、半分を頼りにもう半分を理解していく。 酒場の酔っ払い客が、娼館の噂話をしている。 「あそこの店に最近新しい娘が入ったのは知っているか。珍しい肌の娘だ、どこの娘だろう」 「北から娘を仕入れたんだよ」 フリンは、奴隷市場に向かった。 奴隷市場は、大陸の西にある蛮族の街にあった。 確かに、色々な肌の娘がいる。 フリンは、男の子供が売られているか探した。 果たして、少年どころか、老若男女… 鎖に繋がれた奴隷を眺める客は、牛の頭をしていた。 舌なめずりして、商品を物色している。 フリンは、普通の猫のふりをしたまま、ブルッと震えた。 「珍しい猫だなぁ」 明るく言って、毛足の長い異国の猫を術師服の若者が抱え上げた。 奴隷商が恭しく術師を扱う。 術師は、実験素材を数体注文した。
/140ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加