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マーズは、肉と野菜を呑み込み、さらに、スープ代わりの薬草茶を飲み干して、言った。
「行ってくればいいじゃん。
オレ、留守番してるから」
「留守番……
いや、二週間だぞ?
食事の心配もあるし、ロックテイルの宿に居ればいい」
マーズは目を丸くして抗議した。
「金がもったいないじゃん!」
「ばっ…」
バカ、と言い掛け、師匠は口を閉じてため息を吐いた。
「しかし、危ないだろう。
お前は竜族で、そこらに溢れている人間や精霊族じゃないんだ。
この街に、最初に来た日を忘れた訳ではあるまい」
師匠に諭されたが、マーズ少年は突っ張った。
茶のお代わりを継ぎながら、つっけんどんに言う。
「一年前の話じゃん」
師匠は、鼻で笑った。
「この一年の成長では、まるきり足らん」
膨れっ面になった弟子を眺めつつ、女師匠も茶を飲んだ。
宿の方が危ないといえば危ないかもしれない。
ロックは腕っぷし皆無だし、エリアルは傭兵仕事があるかもしれない。
猫でも兄さんに居てもらって自宅が無難だろうか。
考え始めた師匠に苛立ち、少年は強く断言した。
「とにかくオレは家に居る!
行ってこいよ!新婚旅行」
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