飛竜に乗って

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銀髪の女騎士がフリギアへ旅立つ日、彼女の弟子と、師弟の友人たちは、街外れの草地に集まっていた。 婚約者の国に出かける友人の見送りは建前で、彼女の婚約者が乗って来る飛竜と、彼女の婚約者の見物が目的だ。 錬金術士たちの城塞都市は、草原にポツンとそびえ、東側に南北に走る広大な山脈がある。 山脈のさらに東は大森林地帯で、森林の中に山脈より高い山がある。 その山の斜面にある小さな国がフリギアである。 フリギアは、マーズと同じ竜族の子孫の国だ。 騎士団は、馬も扱うが、飛竜も扱う。 マーズの師匠、アリスンの婚約者は、フリギアの騎士団を束ねる王太子で、今日は飛竜で彼女を迎えに来るという。 着陸許可が街中では降りなくて、城壁の外で待ち合わせとなった。 「あれじゃないかしら」 視力がいいアイゼルが、晴れた夏空を指差した。 多くの者には、何も見えなかったが、暫くして彼女が差し示した方角に鷲のような影が誰の目にも見えた。 それからまただいぶ暫くして、鷲ではないと明らかな姿が確認できるようになった。 ワニのような牙のある口。 コウモリのような翼。 目と胴体はトカゲで、後足が太く強靭だ。
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