5人が本棚に入れています
本棚に追加
「でけぇ!!」
宿屋ロックテイルだけが興奮気味に叫んだが、野次馬は皆同意だった。
着陸するためのホバーリングで起こった風は、草原の下草を掻き上げ、人々の髪や衣服を乱した。
拳闘士エリアルは、養女のアイゼルと、小柄な友人のドワーフ、鍛冶屋トールが飛ばされないよう両脇に2人を抱えて、感動と共に生きた飛竜を見ていた。
エリアルの隣に立つ、同じエルフの青年、植物学者ヤンも同じく感慨を持って見ていた。
エルフは寿命も青年期も長いから、彼らは、街に住む友人たちの何倍も歳を経ている。
そんな彼らも、生きた竜を見たのは初めてだった。
アリスンは、呪いで猫に姿を変えている義兄タキトゥスが飛ばないよう、抱え上げていた。
飛竜が翼を収め、風が収まると、猫のタキトゥスはアリスンの腕から飛び降り、身軽く飛竜の上に駆け昇った。
「エッ!?に、兄さん!!?」
竜の上から、面食らった若い男の声がした。
暫く、彼の不思議な独り言が続き、やがて観衆に遠慮がちに隻眼の竜騎士が地上に降りた。
銀髪の女騎士は、言った。
「もしかして、王子には、兄さんの念話が聞こえるのか?」
「やはり、これが兄さんか…」
最初のコメントを投稿しよう!