飛竜に乗って

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「でけぇ!!」 宿屋ロックテイルだけが興奮気味に叫んだが、野次馬は皆同意だった。 着陸するためのホバーリングで起こった風は、草原の下草を掻き上げ、人々の髪や衣服を乱した。 拳闘士エリアルは、養女のアイゼルと、小柄な友人のドワーフ、鍛冶屋トールが飛ばされないよう両脇に2人を抱えて、感動と共に生きた飛竜を見ていた。 エリアルの隣に立つ、同じエルフの青年、植物学者ヤンも同じく感慨を持って見ていた。 エルフは寿命も青年期も長いから、彼らは、街に住む友人たちの何倍も歳を経ている。 そんな彼らも、生きた竜を見たのは初めてだった。 アリスンは、呪いで猫に姿を変えている義兄タキトゥスが飛ばないよう、抱え上げていた。 飛竜が翼を収め、風が収まると、猫のタキトゥスはアリスンの腕から飛び降り、身軽く飛竜の上に駆け昇った。 「エッ!?に、兄さん!!?」 竜の上から、面食らった若い男の声がした。 暫く、彼の不思議な独り言が続き、やがて観衆に遠慮がちに隻眼の竜騎士が地上に降りた。 銀髪の女騎士は、言った。 「もしかして、王子には、兄さんの念話が聞こえるのか?」 「やはり、これが兄さんか…」
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