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珍しい食事に満足した飛竜は、折り返しの長距離飛行を前に士気が高い。
「竜の餌をありがとう、とても助かりました」
礼を言われた宿屋は、竜の上に戻った王子を見上げた。
初恋相手が選んだ男は、噂どおり謙虚で真面目そうだ。
「もう帰って来なくていいぞ」
「黙れ」
反対に、田舎と下町で育った女騎士は、親友に冗談を言われていた。
婚約者の後ろに女らしく横座りし、背から腕を回すアリスンは、エリアルには違和感があった。
とうとうエリアルは笑いだした。
「何を笑ってるんですか」
そう言うヤンも笑っている。
「お前ら、覚えてろ…」
毒づく男勝りな婚約者の体温を背に感じながら、竜騎士は竜を再びはばたかせた。
「気を付けてねー!
お土産待ってるよぉー!!」
アイゼルは両手を振って叫んだ。
トールも手を振った。
いつか、本当に帰って来なくなる日が来るだろう。
今日は、その予行演習。
一行は、飛竜が適度な高度まで上がったところで、街に戻り始めた。
「ねぇ、マーズ。
今晩は、ウチで食べるでしょ?」
「食べる!」
アイゼルは猫を抱えたマーズを当然のように誘い、即答で了解された。
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