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突き抜けた頂上を見るために俺は登っているのだろうか。いったいこの上には何があるのだろうか。分からない。隊列は既に俺の中では関係がない。軋む腰と、背筋を流れていく疲労と、痺れている足の裏が、俺にとっての山だった。視界の先には先輩たちの背中が見えた。遠い。走ればすぐにでも肩を叩ける距離。でもそのはじめの一歩は到底踏み出せそうにはない。だから現状を歩くしかなかった。痛みと疲労を積みかせね、行き着くところまで。
大変に苦しい。多分俺の脚は割れてしまうのだろう。肩の関節も今にもゴトンと落ちてしまうのだろう。一瞬が途方も無く続いている。まばたきも瞬かない。辺りの景色は薄めた絵の具のように歪んでいる。連なっている木の幹が、檻のように感じる。ずっと上の方で重なっている木の葉が悠々とそよいでいる。その一枚一枚を丁寧にくしゃくしゃにしたい。具合が悪くなるまで。
登山靴が俺を運んでいる。靴日もが俺を地面に縫い付けている。ザックが俺を引き止めている。その角を曲がればこいつらは俺を離してくれるだろうか。この濃厚なまどろみはいつ終わるのだろう。過ぎていく。俺の膝は、ばかいってんじゃねぇよ、と面白そうに笑っていた。
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