序章【椿と春の海】

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俺──真柴春海は、喘息持ち。 そのせいで、昔から親に迷惑をかけている。 いや…正しくは、母さんにだけ。 父さんは、いない。 2人は俺が小学校に上がる前に離婚した。 離婚の原因を、母さんは教えてくれない。 だが、俺は知っている。 ──俺が原因だということを。 わかっていた。 ──2人の仲を、俺が引き裂いたのだということを。 俺が生まれたばかりに、2人の関係が壊れたのだ。 母さんは口にしない。 父さんは始めからいない。 そう言わんばかりに、父さんの事を口にしない。 俺が原因で、離婚したのだとも言わない。 いや、口にしないだけで、俺は知っている。 母さんは俺が嫌いなのだと。 俺は、わかっている。 母さんは俺を憎んでいるのだと。
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