31人が本棚に入れています
本棚に追加
体が弱く、怪我をしやすい俺は、病院の常連だった。
だが、その病院が潰れてしまい、仕方なく俺は隣町の病院まで通院することとなった。
そしてある日、俺は見てしまった。
母さんの、泣いている姿を。
父さんと写っている写真を握り締めて、泣いている母さんを。
俺は見てしまった。
俺に気づいた母さんは
「あんたさえ、いなければ」
と、怒りを滲ませた言葉を、俺にぶつけた。
俺の中で、何かが壊れた。
それは、母さんに抱いていた、信頼、だった。
嫌いだとはわかっていた。
けれど、俺の思い過ごしであってほしかった。
そう、母さんが俺を嫌う筈がない。
そう思っていた。
その信頼は、あっさりと打ち砕かれた。
涙ながらに母さんは俺に今までの負の感情をぶつけた。
──我慢、していたんだな。
俺は素直に、そう思った。
父さんと離婚したあの日から、今日まで、母さんはずっと我慢していたのだ。
お前さえ生まれなければという感情を、必死に抑えつけていたんだ。
やがて母さんはハッとし、ごめんなさい、ごめんなさいと繰り返し何度も謝った。
─…いいんだ、母さん。
俺も、ごめん。
生まれてきて、母さんを悲しませて、ごめん。
最初のコメントを投稿しよう!