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「かの、じょ…?」
「彼女というか、偽彼女というか……。」
「…何か、ごめん。」
「…………。」
「ありがとう、文田。」
「………帰るよ。」
本当、あたし何言ってんのかな。
おかしい。こんな事言う筈じゃなかったのに。
「ま、待ってよ文田。」
「手!!」
「え……?」
「付き合ったら、手は繋ぐ。それぐらい分かるでしょ?」
「あ、そっか……。」
手を差し伸べてそう言い放つと太一はおずおずと手を握ってきた。
「太一さぁ…、普通恋人繋ぎしない?」
「む、無理だよ!只でさえ手ェ繋ぐのお母さん以外した事ねーんだから。」
手を繋ぐのが初めてとか…、ウブ過ぎるでしょ。
「てか、手汗凄くない?」
「うわ…今、文田の顔全然見れねぇ。」
「恥ずかしがってんじゃねーよー、」
「わ、!っちょ…マジヤバいって文田ぁ!」
覗き込んだだけでもともと赤い顔を真っ赤にさせる太一。
なんか、ちょっと可愛い。
「もう、いじめんなよー。」
「だって太一からかうの面白いんだもん。」
「はぁ…………もう。」
そう言って太一はあたしの手を握る力を強くした。
あの人とは違って、細くて骨ばった長い指に包まれる。
…うわ、太一の指……すっげー好きかも。
「…………文田?」
「……え、」
「どうしたの?」
「…………いや、」
どうしよう。
あたしが太一の顔見れない、だなんて。
『(まだ始まったばかり。)』
「(この先の未来はきっと明るいハズ。)」
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