襟/糸/1

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多分、あの日から俺は君の事が好きだったんだと思う。 それは、今から3年前の事だった。 「…………暑ぃ。」 中学3年だった俺は夏期講習という事もあって毎日暑い中塾に通っていた。 毎日暑苦しい人混みの中を歩いて行くのに、俺は嫌気を差していた。 『てめー生意気なんだよ!』 『お前邪魔なんだよ!』 『死ねよお前!』 …只でさえ暑苦しいのに路地裏からもっと暑苦しい声が聞こえる。 しかも女子の声。 …女子の殴り合いの喧嘩なんて、見苦しいだけなのになぁ。 そう思って路地裏の前を通ろうとした時だった。 『お前聞いてんのかよ!』 『……ねぁ、こいつ息してる?』 『やば…死んでんの!?』 『……、逃げるよ!』 『うん…っ。』 “息してない”、“死んだ”……? ちょっと待て、そんな奴を置いて逃げるっておかしくないか? 俺は幼いながらもそう思い何時もだったらそんな行動をしないのに気付けば路地裏へと走っていた。 「…………っ!!」 目の前には、血まみれで倒れていた小さな女の子。 …本当に、死んでるみたいだ。 .
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