第一章

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─*─  帰りのHRも終わり、生徒たちが続々と教室を出ていく。  その中に縁の姿は無く、席にも荷物は残っていない。  つまり、すでに教室を出たということだ。 「たっける~! 帰ろ~!!」 「悪い、今日はちょっと用事がある」  美鈴自身に対する好意的な眼差しと俺に対する嫌悪感漂う眼差し、二つを携えて彼女はこちらにやってくる。  だが生憎、今日はその要望に答えることはできない。これはある意味大事な用事だ。  俺は適当に言葉を返して教室を出たのだが── 「……なんでついてくるんだよ」 「だって気になるじゃん! 人生が暇で暇で仕方ない猛が用事を作るなんて、今日は多分お赤飯だねっ!!」 「別にいつも暇ってわけじゃない。そしてお赤飯の用法を間違っている。普通は普段起こらないような現象を入れるべきだ」  今の人生に満足がいかないというのは、そういう意味で取れば美鈴の言う通りだ。  今回の場合、胸に残ってなかなか取れない突っかかりを取るための用事なだけだが。
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