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縁の姿は意外にも早く見つけることができた。
彼女はちょうど校門を抜けたところをゆったりとしたスピードで歩いていて、その背中からはどことなく小ささを感じられる。
教室での様子から真っ直ぐ学校を出る、という予想が功を奏したようだ。
「あれって転校生の……」
「ああ、ガキの時に同じ幼稚園だったんだ。最初はわからなかったが、恐らくは本人で間違いないだろう」
昔の話だからあまり自信は無いが、直感的に間違いないという確証が俺にはあった。
しかし……ここまで来て言うのも変な話だが、一体何を言うつもりなんだ、俺。
幼稚園の話を出して思い出してもらおうにも、そこから先が続かない。あの様子からして、俺のことはさっぱりみたいだしな。
むしろ、わざわざ言わなくてもいいんじゃないか?
「ふむふむ、幼稚園というあまり記憶に残っていないであろう時代の話をチョイス。そこから自慢のトークセンスで右も左もわからぬ転校生に好印象を与え、そして手中に収める……なんて巧妙な手口! さすが『狙った獲物は逃がさない。女を口先のみで落とす話術師、山上たけ──ふぎゃ!!」
「悪い。言いたいことがありすぎたから、武力を行使させてもらった」
「な、な、ななな……殴ったな!? お、親父にも殴られたことが無いのに!!」
「俺がやったのはデコピンだ」
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