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小さい頃、まだ幼稚園の時だっただろうか。俺は縁ととても仲が良かった。
毎日のように服が汚れるまで遊んで、その度に母親や先生に怒られてたっけな。
だがある時、縁は俺の前から姿を消した。いや、単に引っ越しただけなんだが、当時の俺にはそう思えたのだ。
確かあの時、馬鹿みたいに大泣きしたんだっけ。
どうやら俺は知らない間にガキの時の思い出を忘れていたらしい。
まあ、何年も前のことなんて、誰だって朧気にしか覚えてないか。
また一度、縁の方に視線をやる。
やはりその姿は、俺の記憶にあったものとほとんど同じだ。
「……?」
「──!」
俺の視線に気付いたのか、縁がこちらを向く。
交わされた視線と視線。俺は咄嗟に黒板の方へ視線を戻していた。
理由はわからない。なんとなく、反射的にってやつ。
でも、何かしら話さなくては、と思った。俺が自分から接触を試みるなんてずいぶん久しぶりなもんだな。
その後、俺は教師の話なんて耳に入れず、どう話し掛けるかをずっと考えていた……。
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