28人が本棚に入れています
本棚に追加
夏と秋が混じり合った、そんな匂いが、風に乗って運ばれてきた。
9月上旬。
今は5限目の授業中。
俺は窓側の席じゃなくて廊下側の席だから、日光なんてないけど…お昼の後の授業って眠くなるんだよな。
そのうち睡魔が襲ってくるのか?
そう考えていたら案の定、欠伸が出てきた。
俺は眠たい目を擦りながら周りを見た。
皆ほとんど寝ている。
起きてる奴がいても他事をしていた。
誰も真面目に授業を受けてノートを取ってる奴なんていない。
ある奴を除いては…。
俺はチラッと窓際を見た。
ちなみにこの学校は学期毎に席替えをする。
今学期の席替えはまだしていない。
だからまだ出席番号順だ。
…やっぱり。
窓際の席を見ると一人だけ頭を上下に動かし、シャーペンを走らせてる奴がいた。
平山 彩子(ひらやま あやこ)だ。
いつも一人でいて誰とも話さない。
もう入学して2年と半年だ。
いくらなんでも友達の一人や二人はいる。
だが、あいつには一人も友達がいない。
そして、小さい体に小さい顔。
顔のパーツとかはよく見たことがない。
ってかあいつが顔上げる時なんて授業中しかないし。
授業中以外はずっと下を向いている。
普通逆じゃね?
それから、染めることを知らない長い黒髪。
髪のせいで顔がよく見えない、というのもある。
最初のコメントを投稿しよう!