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俺があいつを見てから一週間が経った。
HRの時間、いきなり担任がこんなことを言い出した。
「もう二学期が始まって一週間以上は経った。
そろそろ席替えをしようと思う。」
そう言うと黒板に四角の升をいっぱい書き出した。
もう席替えすんのか。
早えな。
「この袋の中に数字が書かれた紙が入っている。
男女ともこの袋の中から紙を引いてくれ。
見たら黒板の四角の升に自分の名前を書くんだ。
じゃあ回すぞ。」
…なるほど。
あの四角の升は座席を書いてたのか。
でも、わかりにくいな。
何か足んねぇ気がする。
「先生。」
俺は声を発するのと同時に手を挙げた。
「ん?どうした井上。」
先生の声に反応して一斉にバッとこっちを向く。
さすがにこの視線はこえーよ。
みんなが見る中、俺は苦笑いをしながらも足りない何かの正体を言った。
「黒板の四角の升なんですけど、どっちが前なのかわかりません。」
「確かに!」
俺の言葉にみんなが頷いた。
先生もフムフムと聞いている。
俺はそのまま言葉を続けた。
「なので先頭より少し前の真ん中の方に、もう一つ四角の升を書いてその中に“教卓”と書いてくれませんか?
その方がわかりやすいので。」
俺の言葉を追いかけるように先生は黒板にチョークで書いていた。
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