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「今度はやられたかな‥‥」
優介は麻雀牌をかき混ぜながら、心中ひそかにつぶやいた。
深夜の賭け麻雀は、安月給の研修医である優介たちにとって、当直の暇潰しの定番になっていた。
一局目は優介の大勝だった。
二局目も逆転でトップだった。
勝ちはすでに6万に達しようとしていたが、三局目はそう上手い具合にはいかなかった。
オーラス(終番)を迎えて、優介とトップとの差は約2万点。
なんとか配牌をまとめて、せめて満貫ぐらいの役であがらなければ、今までの勝ちも意味が無くなってしまう。
しかし配牌は、優介の勝ちをあきらめさせるようなものだった。
萬子も筒子も索子も、幺九牌(ヤオチュー牌:数字の一や九の牌)に偏り、あとはバラバラの字牌ばかり。
対々か七対子ぐらいが精一杯の配牌であった。
一巡目は『北』、東西南北が一枚ずつ揃った。
二巡目をツモると指先に何も感じない。見ると『白』だった。これで白發中が一枚ずつ揃った。
「待てよ…」
三巡目は、筒子の九筒、四巡目は、孔雀をかたどった索子の一索、五巡目に萬子の一萬を引き当てるとなんとテンパイ。
手は、いつしか國士無双が完成していた。
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