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数分後、うどんげが小さめのリュックを持って玄関に戻ってきた。
「それじゃあ、行こっ」
うどんげが手を差し出す。
その手を握りながらもう一方の手でうどんげが持ってきた荷物を持つ。
「あっ、ありがとう……」
小さな気遣いに対し、小さく礼を言う。
しかし、男は聞こえてたのか、
「礼はいらないよ。
うどんげの可愛い顔が見えるから」
と返す。
「えっ!?あっ、もう……
早く行こっ」
これを聞いたうどんげは真っ赤な顔を隠そうとしてるのか、手を引っ張り先に進もうとする。
男も微かに緩やかな笑みをこぼしながら、うどんげに着いていく。
今日の目的地は冥界。白玉楼の庭で二人きりで、お忍びで花見をする事である。
その為に役にたつのがうどんげの能力である。
彼女が男と彼女の波長を完全に外界からズラし、二人きりの世界を作り出しているのである。
動物も妖怪も人間も二人以外存在せず、
風で落ちる竹の葉や、二人の足音に葉が擦れる音。
それだけが彼らを穏やかに包んでいた。
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