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「凄い……綺麗……」
二人の眼前は白い桜で埋め尽くされていた。
流石は誰も荒らす者のいない桜の名所である。
地は桜の花に覆われ、薄い桜色の絨毯を敷いているようである。
空は何百何千本の桜に覆われ、木漏れ日で桜色の雲から光が差し込んでいるように感じる。
二人は桜の花の雨を浴びながら、何も口に出せないまま進む。
「そろそろ座ろうか?」
男がうどんげに尋ねる。
「あっ、そ、そうだね。」
急に話しかけられて少し驚いた様子。
「敷物あるけど、この様子なら使わなくても良さそうだね。」
うどんげが散った桜の上にそのまま腰を下ろす。
男もうどんげの後に続き、腰を下ろす。
「さぁて、今日はお花見って事だから、お花見に合う飲み物を持ってきたよ!」
うどんげが嬉しそうに、外の世界の魔法瓶とか言う筒と、小さな包みを取り出した。
「今日は桜茶だよ。
上手く出来てると思うんだけど……」
うどんげが包みから湯呑みに桜の花を入れ、その中に魔法瓶から緑茶を注ぐ。
この湯呑みの底の桜の花が浮いて開いてきたら飲み頃との事なので、二人とも湯呑みの中を一緒に覗いていた。
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