うどんげとの花見デート

7/12
前へ
/12ページ
次へ
「あっ!咲いたよ!  ほらほら、飲んでみて。」  湯呑みの底の桜がゆっくりと開くのを見て、急かすように言う。  男が、湯呑みに口を着ける。  緑茶のほのかな苦味が、桜の花の香りを引き立てていて、  周りを桜に囲まれていたにも関わらず、花見に来てから一番桜の香りを楽しめているようだ。  一気に飲むのはもったいないと感じたのか、最後の一滴までゆっくりと飲み干す。 「……おいしかった?」  うどんげが間をおきながら心配そうに尋ねる。  男はうどんげの問いかけに対して、 「味ももちろんおいしいけど、それ以上に良い香りがする。」  と答えながらうどんげの長くサラサラした髪に指を通す。 「でも、うどんげの髪の香りの方が好きだな。」  そして微笑み、髪を撫でながら言う。 「も、もう!  何言ってるんですかあなたは!  あ、そういえば師匠に持って行けって言われてた物があったんだった!  どこにしまったっけ!」  顔を真っ赤にしたうどんげは話を逸らしつつ、  顔を見せないように荷物の中に手を入れ、何かを探す。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加