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男は、カウンターにいる浅月に気づくと、目の前まで走り寄り、勢いよく頭を下げた。
「おはようございます!
すみません、遅刻しました!
いつもと違うシフトだったんで、入り時間勘違いしてました!!」
「う…うん。とりあえず、打刻して鍵取ってきたら?」
浅月は男の勢いに押されつつも、冷静に時計を指さし促した。
男は相当テンパっている。
急いで事務所に入って行った。
今日、浅月と店長の他にもう一人店員が入るなんて、シフトには書いていなかった。
店長から何も浅月は聞かされていなかった。
男が鍵の束を腰に着けながら事務所から出てきた。
「おはようございます。
俺、霧谷(きりたに)っていいます。すみません、バタバタしてしまって。
俺、まだ早番しか入ったことないもんで、時間間違えちゃって。」
霧谷は改めて挨拶をした。
「浅月です。私は遅番専門だから、会うのは初めてだね。よろしく。」
「よろしくお願いします。
あの、ところで店長は?」
霧谷は一礼すると、辺りを見回すような仕草をした。
「店長なら休憩に行ってますよ。そろそろ戻ってくるはずなんですけどね。」
「そうなんですか。
俺、昨日急に遅番入ってくれって店長に頼まれたんですよ。
このバイト入ったばかりだし、まだ何したらいいのかわからないんですけど…」
店長はまだ戻ってくる気配がない。
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