【16:44】

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男は、カウンターにいる浅月に気づくと、目の前まで走り寄り、勢いよく頭を下げた。 「おはようございます! すみません、遅刻しました! いつもと違うシフトだったんで、入り時間勘違いしてました!!」 「う…うん。とりあえず、打刻して鍵取ってきたら?」 浅月は男の勢いに押されつつも、冷静に時計を指さし促した。 男は相当テンパっている。 急いで事務所に入って行った。 今日、浅月と店長の他にもう一人店員が入るなんて、シフトには書いていなかった。 店長から何も浅月は聞かされていなかった。 男が鍵の束を腰に着けながら事務所から出てきた。 「おはようございます。 俺、霧谷(きりたに)っていいます。すみません、バタバタしてしまって。 俺、まだ早番しか入ったことないもんで、時間間違えちゃって。」 霧谷は改めて挨拶をした。 「浅月です。私は遅番専門だから、会うのは初めてだね。よろしく。」 「よろしくお願いします。 あの、ところで店長は?」 霧谷は一礼すると、辺りを見回すような仕草をした。 「店長なら休憩に行ってますよ。そろそろ戻ってくるはずなんですけどね。」 「そうなんですか。 俺、昨日急に遅番入ってくれって店長に頼まれたんですよ。 このバイト入ったばかりだし、まだ何したらいいのかわからないんですけど…」 店長はまだ戻ってくる気配がない。
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